今回の記事はこの本の感想とレビューです。
この本はとっても分厚く読むのに時間が掛かりました。
- ネグレクトや虐待をする親が許せない
- 過去の嫌なことを思い出すと身体が気持ち悪くなる
- トラウマってなに?
- トラウマの治療法やメカニズムを知りたい
私は犯罪や事故に巻き込まれたこともなく、激しいトラウマもないです。
それでもとても興味深く、役立つ本でした。
- トラウマはそのままでは解消せず一生影響を与えつづえる
- トラウマを解消するには様々な方法がある
- 自傷行為や自殺企図がある人はプロの手を借りよう
- 薬は根本解決にはつながらない
- 過去のイヤな思い出は身体で思い出すことで癒される
- トラウマは公衆保健問題ととらえ社会でサポートするのが望ましい
先日、大田区の3歳の女の子がネグレクトされ亡くなってしまった悲しい事件がありました。
数年前も大阪で2児がネグレクトで亡くなった事件もありました。
加害者となってしまった親も虐待・ネグレクトのサバイバーで、生き方が分からなかったのかと思うと悲し過ぎます。
トラウマは私たちにとって最も緊急の公衆保健問題とこの本の著者も言っています。
加害者となってしまった親を責めたり罰したりしても解決するわけではない。
社会でサポートしていくのが望ましいと本を読んで感じました。
私も少なからずそう思っていました。
しかし税金を投入してメンタルケアのサポートをきちんと行った方が社会的なコストは安くつくと本を読んで知りました。
Contents
「身体はトラウマを記録する」の評判
Twitterで評判をチェックしてみました。
【身体はトラウマを記憶する】
最新の身体心理学では、
身体感覚の重要性が説かれています。
死の危険を感じる強烈な体験をしたときの身体感覚が、
いつになっても再現されることがあります。
また同じことが起こるのではと条件反射で、
身体はあなたのいのちを懸命に守ろうとしてるんですよね📖
— まえまえ|メンタルコーチング研究家 (@maech07) June 25, 2020
上記のツイートはこの本の良さを端的にあらわしてます。
「身体はトラウマを記憶する」
今年読んだ中で断トツに推したい一冊。
著者の自伝的に解き明かされていく、トラウマによる脳の改変メカニズム。
様々な治療の効果。人は誰でも多少のトラウマを抱えて生きている。
人に関わる上で大事な要素満載です。マティスの表紙も◎ https://t.co/kSey9MmiPf pic.twitter.com/ScMHbynsxP
— sumidaokita45 (@sunnychild45) December 13, 2019
確かに誰でも多少のトラウマを抱えて生きてますし、
分厚いのですが、とってもオススメの本です!
「身体はトラウマを記録する」を読んだきっかけ

最近、過去のイヤなこと、思い出したくないことを思い出して、
身体の感覚と感情を味わうようにしています。
思い出したくない辛い過去のことを思い出すと
みぞおちのあたりが辛く気持ち悪くなったり、
背中がゾワゾワしたり、
首を締め付けられるような身体感覚があります。
今まで身体の感覚をあまり感じられなかったので、
感じられるだけでプラス。
メリットがちゃんとあります。
理由は後述します。
またこの身体感覚が面白く、
なんか関連する本はないかと思い探したところタイトルが興味深く手に取りました。
「身体はトラウマを記録する」の内容と感想

著者は精神科医でトラウマ研究の第一人者。
ヴェトナム帰還兵のトラウマの様子から、性的・身体的虐待、事故に遭った方などのトラウマがある方について詳しく描かれています。
また本が出版された2016年までのトラウマに関する情報が網羅されています。
- トラウマの治療の軌跡
- トラウマのメカニズムと脳への影響
- トラウマ治療の紹介と効果
- 今後の望ましい治療のあり方
- 最近のトラウマ治療の活動状況
本の中ではトラウマ解消のために様々な試みが行われ研究成果として説明されています。
出てくる方のトラウマがすごすぎて、
自分の辛い過去って「チョロい」と感じるほど。
具体例↓
マーシャは、手を伸ばしてベルトを調節してやってる間に、赤信号を無視して交差点に入ってしまった。そして、別の車に助手席側に衝突され、娘は即死した。マーシャはその時妊娠中で、救急車で救急処置室に向かう間に、七ヶ月になる胎児も亡くなった。
身体はトラウマを記録するからの引用
こんな経験一生立ち直れる気がしません・・・。
他にも激しいトラウマを抱えた方がたくさん出てきます。
トラウマはそのままだと解消されない
本を読んで感じたのはトラウマを受けた人は自力で完全に回復することは難しいということ。
トラウマというほどではなくても辛い過去って誰にでもありますよね?
それってそのまま忘れようと思っても忘れられず解消されないのです。
例えば虐待を受けた後、トラウマ治療に対する知識がない里親に愛情を持って育てたとしても完全にトラウマから立ち直れない人が圧倒的に多い。
薬は症状緩和に役立つが根本解決にはつながらない
世界では薬による治療が主流ですが、薬を飲んでも根本治療にはつながらないのだと本を読んで改めて知りました。
もちろん薬は症状緩和には役立ちますし、お医者さんも製薬会社も儲かります。
うすい知り合いで開業医の精神科のお医者さんがいます。
基本、投薬が中心でお薬を出す治療。
ぶっちゃけものすごいお金持ちです。
ただそれでそれが根本解決につながらないのはうーん💦と思いました。
トラウマを解消するには身体で思い出すことが大事
本の中で言葉を変え繰り返し出てくる説明がありました。
我々の苦しみの最大の源泉は、自分自身に語る嘘であると繰り返し言っては、自分の経験のあらゆる面に関して自分に正直であれと強く私たちに促した。人は自分の知っていることを知り、感じているものを感じないかぎり、けっして良くなれないとしばしば言った。
身体はトラウマを記録するからの引用
つまり自分の心の奥底で感じていることを感じる必要があると訴えています。
私は患者のうちに、体のあちこち広い範囲で何も感じられない人がどれほど多いかに気づいて愕然となった。
身体はトラウマを記録するからの引用
これは私も心当たりがあり
「今、自分の身体が何を感じてるか分かる?」と聞かれた時、
「はっ?何それ?別に何も。フツーです。」と答えたら、
「自分で首絞めてるの分からないの?身体に怒りが溜まってるよ。」
注)人の感覚が読める人に言われた。
言われて驚き、身体の感覚に注目したところ、
自分で首を締めているような身体状況を後から感じたことがありました。
(↑気がつくのに何ヶ月もかかった)
実は身体の感覚を感じられてない人がとっても多いそう。
あなたは感じてますか?
その方曰く、身体感覚を麻痺させてる人がとても多いそう。
ちなみに激しい虐待を受けた人は特にその感じられない身体の範囲が広範で、
中には鏡に映る自分を見ても、自分だと認識できない人も本に出てきます。
彼らは恐ろしい感覚を遮断しようとして、思う存分生きていると感じる能力まで弱めてしまったのだ。(中略)
身体はトラウマを記録するからの引用
理由はあまりに恐ろしい状況で脳の感覚を遮断してしまったことが原因。
彼らは自らの内部の現実と関係が損なわれてしまっているのだ。自分が何を語ろうとしているのかをはっきりさせられないのであれば、どうして決定を下したり、計画を実行にうつしたりできるだろうか。
自分が存在していると感じるには、自分がどこにいるかを知っていて、自分に何が起こっているかを自覚していなければならない。もし自己感知系が故障したなら、それを再活性化する方法を見つける必要がある。
身体はトラウマを記録するからの引用
普通の人が出来るような感覚や脳の機能が失われており、
他の人が驚くような行動をしてしまう理由が描かれています。
だからその方達が思い刑罰を受け服役しても、改善はしないのです・・・。
大田区でネグレクトをして死なせたママは
施設で育ち、
親に何度も包丁で切られ、突きつけられ、
ネグレクトされてたそう。
そんな目に遭ったら本当に怖いし、
怖すぎて感じることが出来なくて脳の機能を遮断してしまうのは当然ですよね。
そこから回復しないまま大人になってしまった・・・。
被害者であるお子さんも不憫過ぎます。
だからこそ加害者のお母さんもトラウマ治療を適切に受けていれば、
結果は違ったのかな?と思うととっても悲しいです。
トラウマを負った人々は、自分の体の内部で絶えず危険に感じている。過去が、心を苦しめる内部の不快感として生き続けているからだ。彼らの体は、内臓の危険信号をひっきりなしに浴びせかけられ、それを制御しようとするうちに、腹の底で感じるものを無視し、内部で起こっていることの自覚を麻痺させるのが得意になってしまう場合が多い。彼らは自己から隠れることを学ぶのだ。
身体はトラウマを記録するからの引用
私自身も「自分が腹の底で感じるものを無視している」
自覚があったので刺さる文章・・・。
内臓の経験が変わらないかぎり、その人の人生は恐れに人質をとられたままとなる。
身体はトラウマを記録するからの引用
つまり辛い過去や思い出したくない出来事はあなたの内臓に経験として刻まれており、
それと向き合わない限り人質にとらわれたままとなるということ。
この本を読み「自分の身体感覚」にさらに注目するようになりました。
私たちが自分の情動脳を「支配する」ことを学んだときだ。それは、惨めさや屈辱を捉える胸の張り裂けるような感覚やはらわたがよじれるような思いを観察し、それに耐える術を学ぶことを意味する。自分の中で起こっていることに耐えられるようになって初めて、私たちは自分の地図を固定して不変にしている情動を拭い去る代わりに、それと仲良くできるのだ。
身体はトラウマを記録するからの引用
最近は自分の惨めさや屈辱を思い出し、
胸の張り裂けるような感覚やはらわたがよじれるような思いを観察しています。
症状を誘発した出来事の記憶をはっきりと明るみに出し、それに伴う感情を喚起することに成功し、患者がその出来事をできうるかぎり詳しく説明して感情を言葉で表したとき、個々のヒステリー症状が即座に、そして永久に喪失することを私たちは発見した。感情を伴わない回想は、ほぼ例外なく成果がない。
身体はトラウマを記録するからの引用
観察するメリット・目的はちゃんとあって、
つまり感情を伴う形で回想すると癒されるということ。
トラウマを負った人は、感じるのを恐れていることが多い。今や彼らの敵は、加害者ではなく、自分の身体感覚だ。不快な感覚に乗っ取られるのではないかという不安から、体が凍りつき、心は閉ざされたままになる。トラウマは過去のものなのに、情動脳は、サバイバーがおびえたり、無力だと感じたりするような感覚を生み続ける。
身体はトラウマを記録するからの引用
結局思い出したくないイヤなことやトラウマは現時点で被害を受けているわけではなくて、
自分の身体感覚に囚われてしまって、
おびえたり・無力だと感じる感覚を生み続けるのだと。
彼の内部で何が起こっているだろうか。それは体のどこで認識されているだろうか。腹の底で物を感じ、胸が張り裂けるほどの悲しみに耳を傾けたときー内受容の経路をたどって心の奥底にまで行き着いたときー変化が始まる。
身体はトラウマを記録するからの引用
観察してて感じるのがちゃんと過去の記憶が身体に残ってます!
トラウマを解消するためにできること

トラウマを解消するために自分でできること
本の中でも紹介された自分でも出来ることを挙げていきます。
ご自身に合いそうなものがあれば、詳しくは調べてみて下さい。
自分自身に手紙を書く
世界各地で実施されたライティングの実験は、気が動転した出来事について書くと、心身の健康が改善することを一貫して示している。
身体はトラウマを記録するからの引用
これなら気軽に始められそうですね。
アート、音楽、ダンス
自分を表現することで癒されるそう。
本の中では演劇や音楽・アートを通じて、元気になっていく様子が描かれています。
ブログも自己表現の一種かもしれません。
マインドフルネス
マインドフルネスも確かに効果があると本で紹介されて面白いなと思いました。
「セルフ(自分そのもの)」によるリーダーシップ
IFSは、「セルフ」による注意深いリーダーシップを培うことが、トラウマからの回復の基本であると考える。マインドフルネスは、思いやりと関心を持って自分の内側の風景を見渡すことを可能にするだけでなく、自己治療を目指して正しい方向へ私たちを積極的に導くこともできる。
では、「セルフ」が主導権を失った場合には、どうなるのだろうか。IFSでは、それを「金剛(blending)と呼ぶ。混合とは、「私は自殺したい」あるいは「私はおまえが憎い」というように、ある一部分を「セルフ」が自分と同一視してしまう状況を指す。
身体はトラウマを記録するからの引用
簡単に説明するとマインドフルネスで自分の内側を見渡すことが出来る。
自分の中にいるいろんなキャラと戦略会議が出来ちゃうのです。
今トラブルを抱えている人は自分の中にいる困ったちゃんが暴走してるイメージ。
この映画はそのイメージが分かりやすくておすすめです。
うちの子も大好きな映画。
インサイド・ヘッドはアマゾンプライムで有料で観られます。(2020年7月時点)
ヨガ

ヨガは心と身体をつなぐ役割があり、身体感覚が戻りやすくなるそう。
マインドフルネスとヨーガを治療に取り入れ始めてから、患者が安眠できるようにときおり処方する場合を除いてこうした薬に頼ることが少なくなっている。
身体はトラウマを記録するからの引用
様々な効果が報告されています。
私は共同研究者たちと、国立保健研究所の支援を受けた研究を行ない、薬や他の治療法では全く効果がなかった患者が、ヨーガを10週間実習すると、PTSD症状が著しく軽減することを立証した。
身体はトラウマを記録するからの引用
私も家でヨガをたまにするのですが体調もメンタルも良い感じになるのでオススメ。
無料のYouTube動画もたくさんあるので、
お気に入りの方法を見つけてやってみて下さいね。
トラウマを解消するためのその他の方法
他にもいろんな方法が紹介されていたのですが、その中で
- 自力では難しいもの
- 知らなかったもの
- 興味深いもの
- 効果が高いもの
をピックアップしました。
ニューロフィードバック
これは説明が難しいのですが、本の中で劇的に回復する人が多い治療例でした。
ニューロフィードバックは 1980年代にNASAからの委託研究で、猫の頭頂部の脳波(EEG)フィードバックトレーニングをすると、てんかん発作を抑えられることが見つかり、過去40年に、主にアメリカで、アスペルガー、ADD、てんかん、うつ病、睡眠障害、軽度の、PTSD、認知症などの精神疾患や、音楽やスポーツのパフォーマンス向上に効果があることが示されてきました。そのため、現在、欧米の国々では、様々な疾患の症状改善を目的として、心理療法として保険適用になっています。
同様にパフォーマンス向上目的としては、イギリス、アメリカ、カナダ、台湾、オーストラリア、シンガポールのオリンピックチームや、NASAの宇宙飛行士トレーニングセンター、Formula1チーム、アメリカ海軍・陸軍、プロゴルフチーム、セリエAミラノのトレーニングとして用いられています。一般社団法人臨床ニューロフィードバック協会のHPより引用
簡単に言うと頭に線を繋ぎ、自分の脳波を画面や音でチェック出来る状態にします。
自分の脳波・脳の状態をチェックしながら、
学習していきます。
治療だけではなくパフォーマンス向上のトレーニングとしても用いられています。
実際に体験出来るところはあまり多くないようですが、
チャンスがあればぜひ試して欲しいものの1つ。
上記リンクのサイトから取り入れている病院などが見つけられます。
EMDR
このEMDRも本の中で劇的に効果が出ている治療の一例としてあげられていました。
自分一人では難しいかもしれませんが、
カウンセリングや治療などで機会があれば試してみて下さい。
EMDRの治療方法の概要が分かる英語の動画です。
英語ですがアニメがあるのでイメージが伝わると思います。
興味があればEMDRで検索してみて下さい。
まとめ:自分の内側と身体の感覚に気づこう

誰でも人は多少のトラウマを抱えて生きていますよね。
たくさんの人に読んで欲しい本です。
- トラウマはそのままでは解消せず一生影響を与えつづえる
- 薬は根本解決にはつながらない
- 過去のイヤな思い出は身体で思い出すことで癒される
- トラウマは公衆保健問題ととらえ社会でサポートするのが望ましい
- 本は読みやすいが分厚い
つらすぎて正視できない。その影は、私たちが生きなかった、最良の人生を宿しているのかもしれない。地下室に、屋根裏部屋に、ゴミ箱の中に、入っていきなさい。そこで貴いももを見つけなさい。食べ物も水も与えられていない獣を見つけなさい。それは、あなただ!この、顧みられずに、追放され、注意を向けてもらいたがっている獣は、あなたの自己の一部だ。ーマリオン・ウッドマン(スティーブン・コープ「あなたが人生で成し遂げた偉業」での引用)
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